高円寺駅徒歩10分ほどにある賃貸マンション1, 2階部分への近隣地域居住者のコミュニティを促進するための複合店舗計画である。
—変電所のある集合住宅
全体計画は、東京電力パワーグリッドの変電所上に建てられた旧社宅の廃止に伴う建替えプロジェクトとして開始された。新規計画は賃貸の集合住宅でありながら地下に変電所を持つ内容であり、変電所の上部は設備メンテナンスのため大きなボイドを必要とするものであった。上部空間は必然的にピロティ広場となり、さらにその上部は賃貸マンションという構成となった。
また大通りからピロティ広場までの空間は近隣を含む居住者とまちをつなぐコモン空間として位置付けられている。通りに面して連続したファサードには、内外をまたぐベンチを設け、内部空間にピロティへ続く動線をつくることで物理的にも連続した空間となる。
—コミュニティ促進のための複合施設
居住者とまちをつなぐための店舗を計画するにあたり、まずは動線を整理することにした。要求された用途としては、カフェ、地域情報ラウンジ、コワーキングスペース、レンタルスペースと多岐にわたるため、入口を個別にルート分けすると利用者が完全に分断してしまう。そのため、まずは内外が連続した屋外的な縁側空間をつくり、エリアを一つのバッファゾーンとして捉えることで、受付を介して目的の場所へ振り分けができるようにする。
ピロティ広場へはカフェを通り、2Fのコワーキングスペースへは地域情報ラウンジを通ることで、なんとなく利用者同士の会話が生まれたり、その日の雰囲気を感じ取りながら目的の場所へ向かうことができる。屋外的な縁側空間には、足場古材や街灯のような照明、テント小屋や植栽などの屋外的なエレメントを散りばめることで内外の連続性を意図的に作り出す。また店名からもインスピレーションを得た”アンテナ”を実際に使用した照明を空間のシンボルとして天井から垂らした。
4つの機能を有するこの複合施設を一貫した空間とするため、使用する材料と色彩、明度をコントロールすることで、本来の目的であるインテリアが引き立つデザインができないかと考えた。ベースを木材・コンクリートで空間をシンプルにまとめ、エリアごとに仕上や色味を少しずつ調整することで、統一感を持たせながらそれぞれのエリアに特徴を作り出している。
—概要
所在地 | 東京都中野区
主用途 | 飲食店, コワーキングスペース, レンタルスペース
構造・規模 | SRC造(一部RC造)・地上8階(1,2階部分)
床面積 | 197.8㎡
竣工 | 2023.01
クライアント | 株式会社クオル
設計 | YN studio
施工 | カシワバラコーポレーション
サイン | 八島デザイン事務所
植栽 | SORRA inc.
写真 | 岩田量自
instagram | @antenna.localbase
—メディア
2023.08
新建築 2023.08月号 (KOENJI Crossover)
新築